第14回美酒会報告 鈴木茂
最も日の長いこの季節。19:00はまだ外がうっすらと明るい。 徐々に夕闇に包まれていくと、 外はダイヤモンドの輝きに似た夜景が広がって ゆきます。
ここ汐留、シティセンタービルの和食「えん」はビルの最上階にあり、壁面が 大きなガラス張りとなっていて、展望台さながらの東京の夜景を堪能すること ができます。
刻々と暮れゆく一日を目の当たりにしながら、会を待ちわびる皆のなつかしい 再会の会話があちこちから聞こえてきます。
前回(第2回)は夏ではなかったので暮れゆく大都会を目の当たりにすることが できませんでしたから、オープニングまでのしばしの光景にも何かいつもと違 うワクワク感を持つことができました。
そしてお待ちかねの開会、 今回のお酒は佐渡のお酒「真野鶴」です。
まずは、ボルドータイプのワイングラスに注ぎ込まれた淡い琥珀色の「万穂」 が乾杯を交わす1杯となりました。
このお酒、ロンドンで開催されたインターナショナル・ワイン・チャレンジと いうコンテストでゴールドメダルを受賞されただけあって、日本酒にはあまり みられないフルーティーでまろやかな香りと味わいのものでした。
華やかでフルーティーなイメージはグラッパやマールに似た印象があります。
そしていつもなら1本ずつ順に開けて解説をいただいていくのですが、今回は 3種類を同時に開けて3つのおちょこを並べて飲み比べるという趣向となりま した。酒度+15という日本有数の辛口の1杯、バランスのとれたこれぞ日本 酒という純米吟醸原酒、そしてエールフランス航空で採用されている大吟醸の 白い花のようなさわやかな1杯、どれも個性的で、同じお米から作られている とは思えないほどの違いがありました。
お話をうかがうとそれぞれ別の蔵人の方が作られているとの事。作り手により これほど個性がでるものだとあらためて感心させられました。
今回、いらしていただいた尾畑専務は、この会でお招きする蔵人さんとしては 初めての女性で、しかも元映画会社の宣伝部からの転職というユニークな経歴 をお持ちで、もともとは蔵を継ぐ気持ちはなかったそうです。でも、佐渡への 思いが今の彼女のお仕事につながったのだと思います。
もちろん、「えん」のお料理も1つ1つ丁寧に作られていて、美味しいもの ばかりでしたが、今回は華のある蔵元の専務、吸い込まれるような夜景、そし て久しぶりに集まった仲間との話花にこの上ないお酒のマッチングで完全に 脇役となってしまった感があります。
もちろん、すべてがそろっての今回の感動だったとは思いますが・・・
最後に佐渡市で行われている「朱鷺環境整備基金」のための募金を募り、その お返しにいただいたオリジナルの1本は、自然を愛する方々が作るお酒を象徴 していたと思います。
この場で募金という形で自然保護という社会貢献できたのは何よりです。
気がつけばすでに10時を回り、会場内での記念撮影も終わりひとまずお開き となりました。お時間の許す方はその場に残って2次会、はたして何時頃まで 酒宴は続いたのでしょうか?たぶん、許される限りの楽しい時間を過ごされた ことと思います。
いい人、いい酒、いい情景に食。バランスのとれたとてもいい一夜でした。